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高遠ユミ(yumi131ff)

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「荊の城」


「教えてほしいの。結婚した夜に花嫁がすることを」──

サラ・ウォーターズの小説「荊の城」です。
ゴシックロマンス的なミステリー小説であり、恋愛小説・冒険小説ともいえる魅力的な作品。著者の前作「半身」より私はこちらのほうが好きでした。

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〈あらすじ〉
19世紀半ばヴィクトリア朝ロンドン。孤児で17歳のスウは、表向きは錠前屋、裏では盗品の故買商である親方と、その連れ合いでやはり怪しい商売を営むサクスビー夫人に育てられた。家業を手伝いながら暮らすスウ。
ある日、詐欺師で色男の通称〈紳士〉がスウに儲け話を持ち掛ける。
ロンドンから遠く離れたブライア城に住む娘をたぶらかし、彼女が相続する莫大な財産を手に入れる手伝いをしろという。普段とはケタ違いの儲け話に躊躇するスウだが、家族に度胸を認めて欲しくて引き受けてしまう。金持ち娘の侍女となるべくブライア城へ旅立つが、ロンドン育ちのスウは静かすぎる田舎の生活に不安を抱く。

陰気な屋敷で気難しく変わり者の叔父と暮らす令嬢・モード。同世代の友達もおらず外の世界を知らないモードの、歳に合わぬ子供っぽいドレスや時代遅れの家具を見て女親が居ないことを不憫に思うスウ。
何の娯楽もなく退屈な城の暮らし。モードの世話をしながら、彼女にトランプやダンスを教えるスウ。盗人家業に染まってはいるが、根はまっすぐなスウとモードの間にいつしか情が芽生えるが──。

頭の回転が速く快活だが、どこかロンドンの霧のような靄に覆われたスウの運命。
孤独で神経質なモードと、変わった趣味を持つ叔父の秘密。

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思わず引き込まれるのは、どんでん返しのストーリーもさることながら、少女たちの心の綾や、背景の描写の上手さもあると思います。猥雑なロンドンの下町や、底冷えするブライア城や、精神病院の、読んでいてまるでその場にいるような気分になる生活感に溢れる様子。板の隙間から漏れる光、湿気に満ちたまとわりつく空気、湿気て「パイ生地のような」冷たいベッド、汚物や食べ物の匂いが混ざった悪臭が漂ってきそう。
ベッドの下におまるを常備とか、今では考えたくない不潔な習慣。
都会から来たスウを煙たがる田舎の使用人たち。

着替えも洗顔も侍女に任せるのが当たり前に育ったモード。無防備に全裸を晒す彼女に目眩を覚えるスウ。
「ペティコートもシミーもキャラコで、その下はそれでも、どこもかしこもやわらかく、バターのようになめらかだった。やわらかすぎる。怪我をしたらどうなるだろう。まるで殻から出した海老だ」
「けれども、それは見ていて不安になるような白さだったから、おおい隠してあたしはほっとした」
「牛乳のように──白くて、きれいで、純で、そして最初から腐る運命だった」

著者が同性愛者だけに、モードの体の描写など見事に官能的で、暗く雑多な背景の中で抜きんでて白く美しい。逆に、どんな女も参ってしまうほどの男前であるはずの〈紳士〉がちっとも魅力的に感じないのは、やはり著者が男性に魅力を感じないからなのかな、とも思います。

礼拝堂の軒先で雨宿りしながら、〈紳士〉に求婚されたことを告げるモードと、心とは裏腹な祝福を述べるスウの切ない場面が印象的。

美味いものなしといわれるイギリスへ実際旅行したとき、ハムやベーコンなどの肉製品やシリアルは美味しいと思いましたが、この時代に登場する食べ物は微妙。「プディング」というとお菓子のカスタードプリンばかりではないとわかってはいても、「熱々の肉入りプディング」ってどんな味なのか想像もつかないし、「耳まで詰め物をした豚の頭」とか「ハムの蜂蜜がけ」とか、美味しそうに書いてあるけれど、いまいちピンとこない。

知らないうちに映像化もされていたようで、観てはいませんが、私の中ではパッケージの写真よりもう少し少女っぽいイメージで、スウの生き生きした人柄が特に魅力的です。

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ストーリーはまたネタバレしてしまうので詳しく書けませんが、ミステリアスな物語、ぜひ騙し騙されて読んでください。ガールズラブに興味ある人もない人も。

↓【※kindle版 上・下巻】





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