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高遠ユミ(yumi131ff)

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えっ、「コインロッカー・ベイビーズ」が舞台に!? 
と思った瞬間ポチッとチケット購入してしまい、あとから、何? 歌劇?(ミュージカルが苦手である)、主演のA.B.C‐Zって誰? あっ、ジャニーズなんだ? ごめんごめん、オバちゃん知らなかったよ、さらに宣伝用の舞台の写真を見て、うわ、この重い原作が何だかポップ! と驚きましたが。

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中学生のときに、村上龍のデビュー作であり芥川賞受賞作の「限りなく透明に近いブルー」を読んで衝撃を受け(当時は感動とかでなくショッキングで)、貪るように「海の向こうで戦争が始まる」、そして「コインロッカー・ベイビーズ」を立て続けに読んだのですが、果たして当時どのくらい内容を理解していたか定かではありません。

原作に強い想い入れがある作品は、舞台化や映像化はある程度別モノと割り切って観るか、あるいは観ないと決めるか、どちらかですね。
私は正直、そんな熱烈ファンともいえないので迷わず観に行きした。

誰が脚本を書いても、誰がキクを、ハシを、そしてアネモネを演じても、すべての原作ファンが満足するということはないと思いますが、とりあえずジャニーズを侮るなかれ。短期間のリハで完成させる訓練受けているし、何より舞台公演はチケットが売れなくてはいけないのですから。
(先日亡くなった蜷川幸雄が好んで人気アイドルを抜擢した理由に、スターの光と影、あっという間に落ちぶれる危うさ・儚さの魅力を挙げていたそうです)

70年代に実際に多発した、嬰児のコインロッカー遺棄事件。
(検索してたら「都市伝説」とか書いてるのを見かけたけど、オイオイオイ、遺棄事件そのものは事実だよ~)

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で、ここからはフィクション。
80年発表の小説の主人公たちが成長した近未来。

〈原作のあらすじ〉
横浜のコインロッカーに捨てられていた赤ん坊の中で奇跡的に生き延びた二人は、ミッション系の乳児園で育てられ、キクユキとハシオと名付けられる。行動的なキクと体の弱いハシは兄弟のように育つが、自閉症の兆候を見せシスターたちは二人を精神科に診せる。原因がその出生ではと催眠療法を受けることに。
やがて二人揃って九州の離島へ養子縁組に出され、桑山とその妻・和代夫妻の子供となる。
危険だから行くなと言われた炭鉱の跡地で、廃墟に住むガゼルと知り合い、キクは父親像を重ね見るガゼルから「ダチュラ」というまじないを教わり、高く舞い上がる棒高跳びに魅せられる。
ある日デパートの屋上のショーで催眠術をかけられたハシは、催眠療法で聞かされた音が記憶に蘇る。それ以来ハシはテレビの前から離れなくなった。あらゆる音という音を聞き、病院で聞かされたあの音を探したいという。
ある日とうとうハシは、東京へ母親を探しに行くと書置きを残し家出。

半年後、ハシを探しに行くという和代にキクは同行し上京するが、思わぬ事故で和代が急死。そのまま東京に残りハシを探すキクは、ワニをペットに飼うモデルの美少女アネモネと知り合う。また、「ダチュラ」を調べるうち、ある毒物に行き当たる。
小笠原諸島のダイビングスポットで奇妙な事故が続き遊泳禁止となる。
東京には立ち入り禁止の薬物汚染地域があり、犯罪者や浮浪者の住処となっている。ハシはそこで男娼となっていた。ハシを買った音楽プロデューサーでゲイのミスターDは、ハシの不思議な魅力のある声に目をつけ歌手としてデビューさせる。話題作りのためハシの本当の母親を内緒で探し、テレビカメラの前で対面させようとするが、駆け付けたキクがある行き違いから銃を発砲。少年刑務所へ送られたキクを追いアネモネも函館へ向かい──。

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〈キャスト〉
ハシ:橋本良亮(A.B.C‐Z)
キク:河合郁人(A.B.C‐Z)
アネモネ:昆夏美
ニヴァ:シルビア・グラブ
ミスターD:ROLLY
真田佑馬
芋洗坂係長

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若いファンばっかりなのかなあ~、と思いつつ会場へ。観客ほぼ女性ですよ! この中に原作ファンはどれくらいいるんだろうなあ~。もしかして完全にジャニーズファン向けみたいな舞台だったらどうしよう、すごい場違いだったりして!? という不安も感じつつ開場しましたが、結論からいうとけっこう良かったです。

まず開演前からむき出しになっている舞台セットが素晴らしい。四角く区切られたセットは二人が育った島の廃墟と、東京の街と、そしてコインロッカーの全部を見事に表わしていました。

楽曲も思ったより良くて、シスターズの歌声美しくてビックリ。ハシとキク二人で歌うシーンも、ハシの歌にニヴァ(かな?)の声が絡んでくるのも良かった。そして一番印象的だったのはアネモネの「ワニの国の使者よ~」という歌だった! 振り付けも可愛かったし、もう一度聴きたい、サントラCDにしてくれたら買うよ、絶対。
芋洗坂さんは歌わなくてもいいんじゃない?(演技は良かったけど)
ニヴァも刺されながら歌わなくてもいいんじゃない? 

休憩を挟み二幕構成で、もとは長編小説なので端折り気味は仕方ない感じでスピーディに進む第一幕と、それに比べるとちょっと冗長気味に感じた第二幕。

二人の幼少期は断片的に描かれるものの、かなり割愛されていて(個人的に好きな廃墟のあたりもばっさりカットされている)これ原作知らない人は話の展開について行けるんだろうか、と心配にもなりましたが…。

二幕の曲をもう少し少なくして(途中でちょっと飽きた)、その分前半のストーリーをもう少し詰め込んでくれてもよかったかもね。

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席が後ろのほうだったので、役者さんたちの細かい表情とかはわかりませんでしたが、

橋本良亮はハシの役をよく理解していると思いました。自身もアイドルなわけで、登りつめたかと思うと破滅に向かい狂ってゆくスターの役というのはもしかしたら自己投影しやすい役どころなのかもしれません。刑務所のキクを訪ねていくシーンの疲れ果てた背中や、ふとしたシーンの姿勢が絵になってるなと。芝居慣れしている人だなと思いました。原作はどちらかというとキクが前に出ている印象でしたが、この舞台はハシが主役だった。
(ただ、カーテンコールでサービスし過ぎよキミ、せっかく良いと思ったんだから、ハシのイメージのまま帰らせてほしかったわ)

キク役の河合郁人もハシほどセリフがモノになっていなかったけど頑張っていた。一途さは感じた。ひたすら声を低く張るのではなく、キクの暗い強さが出せれば良かったんだけどな。アネモネとのラブシーンが一番良かったな。キクもあそこだけはあの年代の男の子という感じなので等身大で観ていて楽しかったです。
鉄条網を原作では棒高跳びで飛び越えるシーン、どうするのかと思ったけど、なるほど~、本当に跳んだように見えた、見えた。

第一幕の衣装が、ハシは白、キクは黒。キクはジャケットより、ただの黒のシャツとかシンプルなほうが似合うと思います。

そのキクと絡む「人を狂わせる顔」の美少女アネモネ。昆夏美、歌上手いし、強気でそれでいてキャピキャピもするアネモネ可愛かった。原作ファンからもジャニーズファンからも妬まれそうな役どころだけど、のびのびと上手に演じていたと思います。「ワニの国」もう一度聴きたい。

あと「ベイビーズ」に引っ掛けてオムツ姿のモブがほんと作品のイメージを覆すようにポップでしたが、ダイバーが語るシーンの海の表現とかすごく好きでした。本当に海に見えました。

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ラストは、んー、だけど他にどうしようっていうの、まあしょうがないじゃない。

※追記:そういえば「俺たちはコインロッカー・ベイビーズ」だってセリフは、原作ではさらっと一行さりげなく出てくるから良いので、堂々と声を張って言われると恥ずかしかったです。

たぶん主演二人のファンが何度もリピートしているのか、一幕終わった瞬間ビシッと拍手、カーテンコールは決まったタイミングで一斉にスタンディングオベーションな観客に苦笑しましたが。

あの廃墟の島のモデルが最近人気の軍艦島だと初めて知りました。
そうか、そいうえば村上龍って佐世保出身でしたね。

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久しぶりに原作をパラパラ読み直したら、二人の育ての母・和代さんの半生が良かった。特にキクと東京のレストランで食事しながら「恨んでいないか」というシーンでうっかり泣けた。やっぱ年齢で感情移入するとこ違ってくるのかな。
キクと和代が上京するあたりの描写、今と違って地方と東京の差がすごくあった時代を感じる。

最近のは読んでないのでわかりませんが、この頃の村上龍って内容は過激でも文章や描写は美しくて改めてびっくりしました。

自分たちが捨てられていた「コインロッカー」というものを遊園地で初めて目にする二人。ただの棚じゃないか、と思うキクに、ハシは言う。
「ねえ、蜂の巣に似てるだろ?」
「いつかテレビで見たじゃない? この一つ一つの箱の中に蜂が卵を産むんだ、僕やキクは蜂じゃないからきっと人間の卵だ、蜂でもそうだったろ? たくさん卵を産むけど死ぬのが多かったろ?」
「キクは、礼拝堂の壁に掛けてある絵の中の髭のお父様がヌルヌルした人間の卵を一つ一つコインロッカーの中に置いている様を想像した。でも違うような気がした。卵を置いていくのは女のような気がする」

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高校生に成長し、意外と人付き合いがうまくなったハシ。無口なキクに、おまえは人気があると言われ、
「ハシはカンナの花を一本千切り花粉を飛ばしながら、そういうことないよ、と言った。僕は話がうまいだけさ、こいつはこういう話をすれば喜ぶだろう、そう考えて話す、疲れるよ、昔からそうだったじゃない? ほら乳児院でさ、僕は牛乳配達の若い奴と割かし親しくしてたでしょ? キクは突っかかっていって殴られたこともあったじゃない?」
「よくわからないけど、僕よりキクのほうがあいつとちゃんと付き合ったんだと思うな、だって僕あいつを殴りたかったんだよ」

東京で、手を上げても上げても素通りするタクシーに苛立つキク。
「このキラキラする街のルールは一体何なのだろうか」
「ルールをひとつ知った。それは待つことだ。騒がず叫ばず暴力を振るわず走らず動き回らず、表情を変えずに、ただ待つのだ」
これは今でも思うな。東京の人は並んだり待ったりするの得意だよね。

スターになる準備をするハシにニヴァが言う。
「これからはおしゃれしなきゃだめよ」
「おしゃれは世界で一番空しい遊びなんだから、だから楽しいのよ、洋服や化粧は何のためにあるか知ってる? 脱がされて裸にされるためにあるのよ、見る人にね自分のあそこを想像させるためにあるの」

(劇中ではROLLY扮するDが、「オシャレせなあかん」という曲を歌っていた)

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「自分のことを嫌な奴だと思った。自分を嫌な奴だと思わなくて済む方法がわからなかった」

惨めそうな浮浪者の女を見るたび、自分を捨てた母ではないかと考えてしまうハシ。
「女に正気を戻してやる。十歳ほど若くしてやり顔の皺を取ってやる。ゴミ捨て場に倒れているのを起こし立たせてやる。髪を梳いてやる。靴を履かせる。風呂に入れる。服を着せる。歩かせる。病院に連れて行き吹き出物を取り手術をしてやる。手術の跡も消してやる。泣くのを止めさせる。町を歩かせる。男と腕を組む。裸になる。肉が少したるんでいるが染みはない。男から舐めて貰う。笑う。女が笑う。そこでまた我慢できない怒りが込み上げてくる。またその女を逆戻りさせて乞食にしていく。気違いの乞食の老婆にゆっくりと戻す」
フィルムの逆回しのように目に浮かぶ映像。

母親ばかりでなく、キクはガゼルに、ハシは「初めての男」ミスターDに、それぞれ見知らぬ父親の姿を重ねる。育ての父・桑山は工場でコツコツ働く「ロボットみたい」な人で、尊敬や憧れは芽生えない。

芋洗坂係長が演じる「常識を守れっていうんだよ」と言いながら常識もマナーもないタクシー運転手が(こういう人いるいる)、
美人の乗客アネモネに突然、自分と一緒に逃げようと言い出し、
「知り合いのノミ屋がその先のビルに事務所を持ってるんです。そいついやな奴で、いつも僕のことバカにしてるんで、ちょっと今から行ってお金を借りるついでに刺し殺してきてやります」
↑ スゲー。こういう狂気を模倣する偽物は世の中にいっぱいいて、まんまとそれにだまされてしまう人もいっぱいいるんだけど、これは本物でそれは偽物だと言い切るのはあくまで私個人の感覚でしかなく、私が偽物だと思うものを本物だと信じる人に「それは偽物だよ」というのも大変失礼なことになってしまう。

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舞台には無かったけど、アネモネがバイクを買うシーンも好きだったな。
「エンジンの音に耳を澄ませてから、アネモネは白いワンピースのまま跨った。道路に出て十メートルほど走った後、ハンドルから両手を離した。大したもんだ、と若い店員が呟いた。車体の安定を調べてる、中古車を買う時には大事なことなんだ」
このシーン、映像にしたら綺麗でかっこ良さそうですね。

読んだ当時、キクの仲間に紹介されたときのアネモネの自己紹介が、「恋人」や「彼女」じゃなく、「キクの情婦です」なのがクールだと思いました。
原作のアネモネはけっこうチッと舌打ちしたくなっちゃうんですが、アネモネの同僚が言う、
「端で観ていてさ、バカだなあと思って憎たらしくてきっと不幸になるぞとわかっても心の底でうらやましくてしょうがない女っているじゃない? アネモネってそんな女なんじゃないかなあって思うの」
そういう感じなのかな。

今回カテゴリーは「芝居」です。

舞台「コインロッカー・ベイビーズ」
東京 赤坂ACTシアターで6月19日まで上演中
福岡 福岡市民会館 6月24・25日
広島 広島文化学園HBCホール 6月29日
大阪 オリックス劇場 7月2・3日

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