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高遠ユミ(yumi131ff)

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FC2小説で主にR-18作品を公開しています。ブログのテーマはエロいこともあればエロくないこともあります。作品は下のリンクよりどうぞ。


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同性愛ってわけじゃない。
だけど同性の友達が異性よりも大切に思えた時期はありませんか。
私はあります。
ジョージ朝倉の「ハッピーエンド」、初めて読んだのはずっと前のことですが、それより少し前に同じように親友と離れ離れになって、ショーコの気持ちが自分のことのように思えたものでした。
今はこの感じ、もう失いつつありますが、読んだ当時かなり感情移入した作品です。

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〈あらすじ〉
マンガ家志望のショーコは元同級生アキラと、彼氏もそっちのけで女同士つるんで過ごしていたが、アキラの突然の結婚にショックを受け、余計なことを考えないためハードな仕事を選んで就職。
低賃金の縫製工場で、天然キャラで仕事のできない同僚・マリエに懐かれるが、友達への依存に疲れたショーコは感情にフタをしたような日々を送る。

マリエはクビになり、別の縫製会社へ転職するがうまくいかず、大雪の夜、道端でケンジに拾われる。ケンジは、学校でいじめに遭い、クラスメイトの前でオナニーさせられ登校拒否になり、自宅の離れにこもる中学生。連れ帰ったマリエを犯そうとするが、いじめのトラウマで目覚めたのか、人に見られながらするオナニーに一番興奮する自分に気づく。自分の代わりに買い出しへ行かせるためマリエを同居させるが、ある出来事でマリエは失踪。

ショーコは再びマンガを描く毎日を送るが、編集者からOKをもらえる作品がなかなか出来ず、恋愛もうまくいかず、すべてに行き詰るが、読者からのファンレターの中にアキラの名前を見つけ、九州に暮らすアキラに会いに行く。
ケンジは転校してから平穏な生活を送り就職も決まるが、すっかり「普通」になった生活に物足りなさを覚えていた。「何者かになるため」、破天荒な自叙伝を書くため、行きずりの女を襲おうとするが、なんとそれは風俗嬢になったマリエで──。


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ショーコとアキラの輝いていた夏。
アキラに誘われれば惰性でつき合ってる彼氏なんか放り出してついて行く。

ジョージ朝倉の、かちっと決めるシーンとゆるいシーンのメリハリが好きで、手書きの文字がいっぱい入ったコマとか大好きで(どーでもいいようなことが書いてありながら読むと面白い)、↓ このページなんてほとんど落書きみたいでありながら本当に楽しさが伝わってくるのね。

「死にぞこなってみたり、
 ファミレスでデザート全種たのんでみたり、
 バンド結成してみたり、
 カイサンしてみたり、
 『ぶっこみの拓』にハマってみたり、
 刺青入れるためにガラ考えたり、
 カオにラクガキして写真撮って『ヤンキーロード』に投稿してみたり、
 載らなかったり」

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くだらないことばかりなんだけど、キラキラ感がハンパない。
アキラのバイト先に会いに行って久しぶりの再会シーンも、抱擁じゃなくて、「激しくヒザをぶつけ合う(交互に)」とか、二人にしかわからない共通言語。


「おめーの不幸ぐらい
 あたしがどーにでもしてやるから」

私の友達も、かつておんなじようなこと言ってくれたなー(しみじみ)

「だって私バカで アキラは調子いいからね」
「ウソでもいいけどさ
アキラの調子の良い言葉だけだから
いっつもいっぱいいっぱいのあたしに風通してくれんの
風あると、めずらしく自分の好きな自分でいられるんだ」

アキラと長期間離れて寂しがるショーコに、
「あんたアキラに惚れてるの? ラブ?」
と尋ねる元同級生仲間。

「あいつも中学生ん時はおもろかったのに
今や惚れたハレタな話しかねー」

「なんか『恋愛』って『友達』よりレベル上なんでしょ?」

いっそレズビアンならもっとラクだったかもしれない。
女友達って、そのうち恋人ができたら疎遠になるのかもしれないし、女同士でくっついているのも疑似恋愛なのかもしれないけど。

「ほら
 私達は
 ただの友達じゃん 一生側にいれる訳じゃない」
「あーーそれ
 ずっと考えないようにしてた事なのに!!!」
「ねえ
 もうちょっと気付かないフリしてあそんでようよ…」

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やがて離れるときがくる。
アキラと連絡を絶ち、本当は一緒に入れるはずだった刺青を入れ、世俗と決別した修行僧のような生活に入るショーコ。
間抜けで情けない自分。

「強くなれますように」

そんなショーコをなぜか慕うマリエ。

「知ってるけど
 寄生できる
 相手のいる
 心地良さは」

ショーコにとっては憧れの存在でもあるアキラ。
同級生の仲良しグループでも一番人気で、ショーコはアキラがいれば男なんか邪魔なぐらいなのに、アキラはナンパされれば「だっておごってもらえるじゃん」と気軽についていくし、大学でもけっこうモテた。
そんなアキラがショーコに言う。
「いつかショーコは
 誰かとちゃんとつき合ったりしてさ
 あたしの事置いてくんだろうなー…」

「それはそのまんまこっちがそっちに感じてた事だ!」

アキラにしてみれば、「マンガを描く」という、何かを先につかんだのはショーコだった。
人気者だったアキラにしては地味で友達の少ない結婚相手。

「あたし好きよ友達いない人
 自分だけになついてくれる方がウレシイもん」


一方で、直接関係ないけれど、わずかに絡みながら進むマリエとケンジの物語。

デブでブスの設定だけど、ケンジの「彼女」と言われて顔がほころぶシーン、昔の王道の少女マンガみたいに可愛い。

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縫製の仕事についたのは、将来自分の子供に服を作ってあげたいからと微笑むマリエ。
何をやっても不器用で、人の役に立ちたい、でも立てない。
死んだおバァちゃんに「肩揉みは一番上手だね」と言われたマリエは、風俗嬢という、人の役に立てて揉み上手の特技も活かせる適職にやっと巡り合う。
人が良くてオツムが弱くて楽観的で、人並みなことができないゆえにどこかぶっ飛んでいるマリエは、どんなにレールから外れていってもみじんも悪意のない人間。

親の力で転校し、いじめから逃れ、親のコネで平凡なサラリーマンへの道まっしぐらなケンジが、「やはり獄中で自伝を書こう」「何者かになろう」というのも、実際にこういう人居そう、というか、自分もちょっとそんな気配ありで可笑しい。

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ジョージ朝倉のこの作品を初めて読んだとき、
「すごく好き。でもこの人売れないだろうな」
と思った(失礼ながら)。わかる人にはわかるけど一般受けしなさそうと思った。
「恋文日和」はすでに映画化されていたけれど。

のちに「ピース・オブ・ケイク」や「溺れるナイフ」など続々映画化されるのですが、私はまだ全部は読んでおらず、初期の短編集「水蜜桃の夜」収録の作品あたりがとても好きです。表題作や「紅いソーダ水」の切なさ、「失踪日和」のバカっぽくも羨ましいほどお似合いのカップル、ポップな「カラフル・フレーバー」、「愛の暴走」のまさに荒唐無稽な暴走ぶり。ときに少女マンガ(あるいはヤングアダルト)というジャンルから外れそうな、勢いが止まらない感じが、読んでいてとても気持ちいいです。
「ピース・オブ・ケイク」や「溺れるナイフ」あたりは意識的に読まれやすい作品として描かれたのでは。まだ途中までしか読んでいないのでわかりませんが。

「ハッピーエンド」の中に出てくる、
「いーわよセックスは!! もーあたし好きで好きで!!」
とみんなをドン引きさせる縫製工場の社長の奥さんの意外な過去。
マリエをつかまえては愚痴を吐き散らすケンジのお母さんが、話を聞いてくれるひとの居ない寂しさからおかしな宗教にハマったり、ワンダーな人たちにも事情や悩みはあり、それでもそれ故に人は滑稽なところが、コミカルに、でもちょっとだけシリアスに、みっちり描かれていて面白い。

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「ハッピーエンド」でアキラの手元から椿がぽとりと落ちるシーン、二人の蜜月の終わりを告げるようですが、「溺れるナイフ」ではコウちゃんが自転車で椿を散らしながら走ってゆくシーンがあり、椿がとても象徴的ですね。

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冒頭、仕事の合間に窓から見たアスファルトが光ってて、
「何なんだ
 キラキラしやがって
 クソッ」
とショーコ。
わかる、なんかわかる。

アキラと車で新潟へ行った思い出。
「道が空いてて
 アキラは飛ばすのが好きで」
「日が昇ってきたらアスファルトがキラキラしてて
 キレイだったぁ…」


若い頃には「青春」という大人の作った言葉、こっぱずかしくて使えませんでしたが、今ならきらめく時期を指すてっとり早い言葉としてさらっと使える気がします。
決してかっこいいわけじゃない、でも何物にも代えがたい青春のきらめきを描かせたら最高だと思います、ジョージ朝倉。
荒唐無稽なスピード感と、ドラマチックな静止感のメリハリが魅力です。

「さみしい女には 小さな夢がある」


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