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高遠ユミ(yumi131ff)

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以前からネット上で話題になっていた本を読みました。
人気ブロガー・こだまさんの「夫のちんぽが入らない」
このタイトル、そりゃあどんなものか皆さん一回はお手に取ってみたいはず。書店で手に取るのは恥ずかしいがチラ見もしないでネットで買って、タイトルで釣られたけどハズレだったらどうしよう、とまだ躊躇している方、読んで損はないですよ。
その衝撃的なタイトルも目立たないよう気遣いの行き届いた装丁になっているので私は書店で買いました。

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文学フリマからネットでじわじわ話題になったらしいですが、あら、その時の文フリって私も参加した回じゃなかったかしら。あれっきりになってしまったけれど。

で、内容はというと、
ド田舎の出身で大学進学のために一人暮らしを始めた「私」。
子供の頃から人付き合いが苦手で登校前に激しい腹痛を起こすほどだった「私」が、安アパートで出会った彼とは驚くほど自然に一緒にいられた。ほどなく交際がスタートするが、セックスに及ぼうとするとなんと文字通り彼の「ちんぽが入らない」。
二人なりにいろいろ試行錯誤するがやっぱり入らない。入らないまま絆は深まり、やがて二人とも教員として就職、結婚。やはり入らないままで。「子供はまだ?」のプレッシャーに耐えながら、教員としてステップアップを目指し別の小学校へ。
しかしそこで待ち受けていたのは学級崩壊。なんでも分かち合ってきたはずの夫に仕事の悩みを話せない。過度のストレスから死を意識し出したころ、インターネット上に思いを吐き出すようになり、そこで知り合った男性と肉体関係を持ってしまう。
夫以外の男性とならセックスできたという衝撃の事実。少なくとも肉体的に欠陥があるわけではないと判明したものの、夫婦間のセックスはできないことに変わりなく、夫はどうやら隠れて風俗に通っている様子。「私」は苦しいことが重なると、「君は大丈夫」という言葉を求め知らない男性と会うようになり──。

と書くと「ミスターグッドバーを探して」のような、「昼は真面目な教員の裏の顔」みたいになってしまう私で大変申し訳アイムソーリー。

若くお金のない二人が慎ましくも丁寧に積み重ねてゆく思い出の数々は感動的だし、学級崩壊のあたりではちんぽのことを忘れました。あれ、これなんの本だっけ?

読んでいるこちらが重苦しくなりすぎない程度にユーモアをちりばめた文章。

〝まるでトンネル工事の堀削員が交わす会話のようだ。山の西側で重機を操る彼がいる。山が小刻みに揺れる。土煙が舞う。東側で貫通を待つ私に無線が入る。彼はヘルメットを外し、タオルで汗を拭いながら言うのだ。
「まったく駄目だね。当っているだけ」〟
まるで安野モヨコのマンガを読んでいるような気になった。

今どき電話番号を暗記するのが得意で、山に欲情するアリハラさん。
〝雪が解け、新芽が萌える季節になると、各地の山頂に蒔かれたアリハラさんの種がいっせいに膨らむ。山々が競うようにしてクロネコヤマトや蕎麦屋の電話番号を暗証し始める。やまびこが身に覚えのない数字を返してきたならば、それは彼が交わった山だ〟

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ネットが普及している今なら、似たようなことで悩んでいる人が他にもいないか探すこともできたかもしれないが、20年前のことである。夫のちんぽがデカすぎるのか、自分の体がおかしいのか、人様には相談できないままジョンソン・ベビーオイルやローションを試してみる。(ひとつ言うなら、ちんぽより「私」のほうにたっぷり塗ったほうが良いのでは?)
最近「マスターズ・オブ・セックス」という性について研究を重ねた実在の研究者たちのドラマを観ているけれど、博士たちに紹介してさしあげたいほどである。

原因ははっきりわからないままだけれど、他の人とはできるなら大雑把には、「好きな相手だと緊張する」系ではないでしょうか。
ひと昔前の男の人なんかよく言いましたよね、遊び相手にならいやらしいこと何でもできるけど、本気で好きな女は汚してしまうようでできないとか。女性なら、思い入れのない男相手なら欲望のまま快楽を貪れるけど、本気で好きな彼にはそういう顔を見せられなくてイケないとか。
特に性に関して厳しい家庭に育つと、セックス=いやらしいもの・汚い行為と植えつけられるため、成長しても好きな相手であればあるほど「大切な人とそんないやらしいことはできない」と愛と性欲が乖離するのではないでしょうか。

素人の推量はさておき、読んで拒絶派も多いらしいです。なぜ? 夫以外の人に走る行為が許せない? しかしこの場合、「浮気」ですらないような気がします。むしろセックス抜きでもこんなに結びついていることは羨ましい。

だいたい、
〝誰かと一緒にいると心がとても疲れる〟
〝自分の容姿の劣りや口下手が気になって会話どころではなくなる〟
〝心の内をさらけ出すにはさらに己を奮い立たせなければいけない。緊張しないでふつうに人と話せるようになりたい。中学生になったら、高校に入ったら、いつか。そう祈りながら、気がつけば十八歳になっていた〟

↑ こんな少女が、初めてのひとり暮らしの初日に知り合った彼と三日目にはつき合ってこれが未来の夫なんて、どんだけ運命的だよ、ほんと羨ましい(笑) 

夜更けの町を男とふたりで歩いても近所の人に噂されない、親に叱られない、初めて手にした自由。

〝私の高校の同級生たちはセックスばかりしていた〟
他に娯楽のない田舎町で、わかるわかる。男のこと、セックスのことしか話題がない同級生。狭い人間関係の中で、誰それはどうだった、と事細かく耳に入ってくる中で、
〝身近な相手とセックスすることに強い抵抗感を持つようになった。そんな恥ずかしいことを恋人や顔見知りの人間とできる気がしない〟
〝どうしてもしなければいけないのなら、全然知らない人がいい〟
あっ、二度読みするとまさにここにできない理由が書いてありますね。だからといって解決法がわかるわけではないですが。

静かに降り積もってゆく二人のエピソードは、思い出のチケットやソフトクリームの包み紙と同じように丁寧にしわをのばしスクラップブックに貼られ、いつでも開いて懐かしむことができる。
これが何の問題もない交際ならのろけになってしまうところですが、ちんぽはいっこうに入らない。彼が風俗で性欲を満たしていることを知り、ほっとする反面、自分にバレないように行ってほしいと複雑な想いを抱く。

飲み会の席で、「週に何回やってるの?」と先輩に訊かれ、苦笑いでごまかしていると、酔った男子が「純情ぶるんじゃねえよ、やりまくってるくせに」と絡み、みんなも笑う。
〝私もその場はまわりに合わせて笑ってやり過ごしたが、質問が隣の女子に移ると、胸が苦しくなって黙り込んだ。もう周囲の声は耳に入ってこなかった〟

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phot:YASU

教員としても手抜きせず真面目に生徒と向き合うがゆえに精神的に追い詰められてゆく二人。人格が壊れそうになっても、セックスは外でしても、愛は変わらない。
夫が「私」を大切に思っていることは随所に感じるし、「私」も、チーズフォンデュを知らないと笑われ落ち込んで帰宅した夫に、その日のうちに材料と道具を揃え食べさせてあげる。夫が「耳の後ろが臭いって言われた」と悲しげに帰宅すると、職場の人間を「クソどもめ」と呪い登校前に丹念に拭いてあげる。

こんな二人を拒絶するとしたらそれはもうやっかみでしかないんじゃないの。子供もなくセックスもしないのにこんなに仲がいいなんて、「適齢期だから」とか「子供ができたから結婚した」夫婦よりずっと純粋ではないですか。
人気だったドラマ「カルテット」を三回目から観てハマったクチですが、チャマコのセリフ、「子をかすがいにした時が夫婦の終わるとき」は本当だと思うし、かといって子をかすがいにしている夫婦が悪いとも思わない。

表面上「普通」の結婚をしているように見えたって、果たして何が普通かわからない。セックスレスだって珍しくないし、愛しているけど性的嗜好がどうしても合わなくて、性欲は外で満たすより仕方ない夫婦だってけっこういると思うのですよ。
「コペンハーゲン」で言ってたように、愛とセックスは本当はセットになっているのが望ましい。でも残念ながら、そうでない場合も多いようです。ネット経由で「私」に会いに来る男性たちだって、普段は「普通の会社員」や「普通のお父さん」をやっているはずなのです。こんなに出会い系に群がるなんて、もしかしてあなたのご主人だってわからない。

「結婚できたんだからいいじゃないか」という短絡的な人もいるようですが、私も若いとき友達に向かって、「あんたは彼氏いるからいいじゃない」と子供っぽいことを言って、「いたらいたで大変なんだよ!」と叱られました。

〝私は目の前の人がさんざん考え、悩み抜いた末に出した決断を、そう生きようとした決意を、それは違うよなんて軽々しくは言いたくはないのです。人に見せていない部分の背景全部ひっくるめて、その人の現在があるのだから〟

ひっそりと生きる二人の愛の軌跡。

幸せな人は時に傲慢になりがちだから、
「自分は普通で健全、そうじゃない人は努力が足りない」と思う立派な人は、不完全な人をそっとしておく優しさを身につけていただきたい。

あ、これカテゴリーどうしよう。一応「私小説」になるのかな?
 「小説」にしておきます。



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